窓からの光が差し込む冬の風景と、うつに関するメッセージが書かれた画像

※ご契約時にご本人の了承を得て、個人が特定されないよう一部内容を変更しています。

「恥ずかしい話ですが、もう3回うつが再発しています」

Yさん(40代・男性・医療職)は、5年前にうつ病と診断され、薬物治療を続けてきました。

「カウンセリングを受けたり薬を飲んだりして、一応良くなるんです」

「でも、冬になると毎年悪化してしまう。主治医に相談したら、季節は関係ないと言われました。でも自分としては、何か原因がある気がしていて…」

不調を口にできない職場


医療職がメンタルの不調を口にすると、「専門職なのに自己管理ができていない」と見られることがあります。ミスが許されない仕事だからこそ、体調不良で休むことに厳しい目が向けられる職場もありますよね。

患者さんには優しい人たちが、同僚には非常に厳しい…

医療職ならうつに理解があるはず、と思われがちですが、現実はそう単純ではありません。

不調を公表せずに働き続けている医療職は少なくありません。私自身、看護師として現場でその現実を数多く見てきたので、Yさんの苦労にはうなずける部分がたくさんありました。

冬は「原因」ではなく「キッカケ」


仕事が悪い、冬がだめ。そういう単純な話ではありません。冬はあくまで「キッカケ」にすぎない。

最初の面談で、Yさんにはそうお伝えしたのです。

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残り続けていた睡眠の課題


Yさんは毎年一度は、抗うつ薬をやめるところまで回復していました。ところが、夜中に何度も目が覚める中途覚醒が続き、睡眠導入剤がゼロになったことは一度もなかったといいます。

しかも、それはベンゾジアゼピン系の睡眠薬。

皆さん、ご存じのように、睡眠障害はうつの主な症状のひとつ。眠りの課題が残ったまま回復したように見える状態は、再発の土台が残っている状態ともいえます。

「毎日、眠れないと訴える患者さんを見ているうちに、自分が眠れないことにも慣れてしまっていたのかもしれません」

そう、Yさんは振り返ります。

そこで伴走では、眠りの状態を記録して主治医に具体的に伝えること、そして眠りを薬だけに任せず、生活のリズムから整えていくことを柱のひとつにしました。

冬に突きつけられる孤独


毎日のLINEとZoom面談を重ねる中で見えてきたのは、Yさんが「趣味がない」「友達がいない」と感じていたことでした。そしてそれが最も鮮明に突きつけられるのが、冬、特に年末だったのです。

一人暮らしのYさんの周りでは、デートや飲み会、旅行の予定を楽しそうに話す同僚がいます。

家族のいる人は、ハロウィン、クリスマス、帰省と、家族の行事が続きます。手帳を予定で埋め、笑顔で「忙しいのよ」と口にする人たち。


Yさんは「いいですね!写真、見せてください」と、作り笑顔で応じていました。

写真を囲んで盛り上がるたびに、Yさんの心は沈んでいきました…


「誰も誘ってくれない。うつの自分といても面白くないだろうし」

「お金がある人はいいな。自分は、うつが悪化して働けなくなったときのために貯めるしかない」

「うつだから彼女もいない。うつの自分は、誰からも愛されない」

「患者さんには偉そうなことを言うのに、本当は自分のことで精いっぱいだ。失格だ」

冬に悪化していたのは、季節そのものではありませんでした。冬に突きつけられる孤独そのものだったのです。

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冬に悪化する人、冬を越えていく人


「冬季うつ」という言葉があるように(※正式な病名ではなく、季節によって症状が強まるパターンを指す通称です)、冬はうつの方にとって悪化のリスクが高まる時期です。

私がこれまで伴走してきた方の中にも、冬に悪化するケースは多くありました。その方々に共通していたのは、心と体の抵抗力が落ちていたことです。


寒さや日照不足、年末の行事。

冬に重なるストレスを跳ね返せないほど、心も体も疲れ切っている。

そして多くの方が、その疲れに自分では気づけていませんでした。

反対に、冬を越えて回復していく方には、別の共通点があります。

うつを招いた生き方や働き方から抜け出そうとしていること。そして、抜け出せると思えていること。

さらに、その一歩を小さく刻み、ベビーステップで進めていけることです。

私の実際の出会ってきた方々のケースを基に、Yさんにもこの二つの共通点をくわしくお伝えしました。

「うつの自分」が自分になっていた


40代は、それまでの生き方を問い直す時期でもありますよね。仕事、家族、人間関係。思い描いていた人生と現実の差が見えてきて、「このままでいいのか」と揺れやすい。

Yさんにも、もちろん、その揺らぎはありました。

けれど、Yさんの一番大きな課題は別のところにありました。うつの自分と、自分自身が一体になっていたことです。

心療内科に通い、薬を飲み続けて約5年。その年月の中で、「うつ=自分」という感覚が染みついていました。

これは、長期化している方に見られる典型的パターンと言えます。

「うつの自分が、支援者でいていいのだろうか」

医療職として人を支える立場にありながら、その問いがずっと消えずにいたといいます。

そしてもうひとつ、「うつは治らない」という絶望感がありました。周りに、うつから回復して薬を終えた人を一人も知らなかったのです。

Yさんが望んでいたのは、薬に頼らずに生きていくこと!

うつになる前は、薬を飲まずに暮らしていたのですから、そこへ戻りたいと願うのは自然なことです。けれど、その道を歩いた人の姿を見たことがなかった。

回復の形は、人それぞれです。

薬を続けながら安定した暮らしを送る道もあれば、主治医と相談しながら薬を終えていく道もあります。どちらが正しいということではありません。

大切なのは、本人がどんな生き方を望むか。Yさんの望みは、はっきりしていました。治った人を見たことがなければ、治る未来は想像できませんからね。


冬が来るたびに悪化するのは、「やはり自分は治らない」という確信を、毎年毎年、上書きする体験にもなっていました。

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伴走の始まり


伴走を始めるにあたって、Yさんは自分の状態をこう話してくれました。

「一番つらい時期は過ぎたので、悪い状態ではありません。でも、いい状態でもない。仕事には普通に行けるけれど、健康ではないんです」

薬を飲んでいないことと、健康であることは、まったく意味が違う。
(↑ここ重要)

Yさんは私の本を読んで、そのことをすでに理解していました。

だから私は、こうお伝えしました。

「この冬は、私が伴走します。不安になったら、LINEに置いてください。一人で抱え込まずに、この冬を一緒に越えましょう」

Yさんは、「ひとりじゃない」と分かっただけで安心し、寝つきが良くなったといいます。

この信頼関係を土台に、伴走が始まったのです。

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「支援計画書」で見えたもの


支援計画書をつくる過程で、Yさんの課題は明らかになりました。一つひとつ説明していく私の話に、Yさんはじっと耳を傾けていました。

一つ目は、中途覚醒が続き、睡眠のリズムと質が安定していないこと。

二つ目は、職場以外のつながりがないこと。

三つ目は、頭と心は疲れているのに、体は疲れていないこと。

そして四つ目が、うつを悪化させる休日の過ごし方をしていることでした。

(実際はまだ、あります)

「そう。自分では気づいていたんです。でも、見て見ぬふりをしてきたことが、実はたくさんあったんですね」

そして、こう続けました。

「抗うつ薬が一時的にゼロになっても、また具合が悪くなる。それは、この課題を無視してきたからだって分かりました。もう、俺は逃げません」

きっぱりとした口調でした。

5年間、「うつ=自分」として生きてきたYさんが、初めて、うつと自分を切り離して見つめた瞬間でした。

休日の過ごし方が、すべてをつないでいた


この四つは、別々の課題ではありません。

休日に昼まで寝ていれば、睡眠のリズムが崩れる。家にこもれば、人とのつながりは生まれない。体を動かさなければ、頭だけが疲れた状態が続き、夜の眠りが浅くなる。

休日の過ごし方を一つ変えれば、残りの三つも同時に動き出す。だからこそ伴走では、四つ目の課題を入り口にしました。

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寒くなると、外に出る機会は自然と減っていきます。Yさんの休日も、SNSを眺め、ネットで買い物をして終わっていました。

地元の友人からは、ときどきLINEで誘いが届いていたそうです。けれどYさんは「予定があって…」と断るのが習慣になっていました。

その奥にあったのは、「仕事のためにエネルギーを残しておかなければならない」という思い込みでした。

休日は、仕事に備えて体力を温存する日。

なおかつ、うつが悪化して無職になる日に備えた貯蓄…すべては仕事のために。

Yさんの暮らしは、そうやって組み立てられていたのです。

Zoomの画面越しのYさんは、体重が増え、便秘も続いていると話していました。

体内のセロトニンの約9割は、腸にあります。腸と脳は神経などを通じて互いに影響し合っていて、腸内環境が心の状態に関わることも、研究で少しずつ明らかになってきています。

体を動かさず、家にこもる休日は、腸の働きも鈍らせていました。心の回復を、体の側からも妨げていたのです。

最初の一歩は、好きな音楽と川辺の散歩


Yさんには、好きなバンドがありました。そこで私は、休日にその音楽をイヤホンで聴きながら、近くの川辺を歩いてみることを提案しました。最初は10分程度で十分です、とお伝えして。

しばらくして、Yさんからこんな報告が届きました。

朝の空気が気持ちいいこと。鳥のさえずりが心地よいこと。散歩中のご高齢の方と挨拶を交わすようになり、立ち話をしたこと。その方の姿勢の良さに、感動したこと。

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「健康になるには、健康になるための生活習慣が必要なんですね。やっと腑に落ちました」

私は著書の中で「生活習慣」という言葉を何度も書いてきました。Yさんは笑顔で、「その本当の意味が分かりました」と話してくれました。

そう、、腑に落ちると人の変化は速い!

でも、そこまでたどり着けない人が多い。ゆえに、多くの方のうつが長期化してしまっているのです。

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ただ、歩いている時間を聞くと、1時間だといいます。アルバム1枚を聴き終えると、ちょうどそのくらいになるのだそうです。

「ちょっと頑張りすぎていませんか」

そうお伝えしましたが、Yさんにとっては、アルバム1枚分というキリの良い1時間が、一番続けやすい形でした。それなら、と私はもう一つだけお伝えしました。1時間歩けずに30分で帰ってきた日があっても、まったく問題ありません、と。

できなかった日を「失敗」にしないこと。それが、続けるための一番の土台になります。

口に入れるものも、一緒に見直す


散歩のあとに飲む水が、少しおいしく感じる。Yさんはそう話してくれました。

それまでのYさんは、日中はコーヒー中心で、夜はアルコールを飲む生活でした。カフェインもアルコールも、眠りに影響します。

特にアルコールは、寝つきを良くするように感じても、夜中に目が覚めやすくなる原因になります。中途覚醒に悩んでいたYさんにとって、見過ごせない習慣でした。

水をおいしいと感じた体の実感をきっかけに、口に入れるものを一緒に見直していきました。

体の変化が、言葉を変えた

散歩を続けて体力が少しずつついてくると、Yさんの言葉が前向きになっていきました。

見た目にコンプレックスを抱えていたYさんでしたが、そんな自分を受け入れつつ、体が変わっていく実感が少しずつ自信になっていったようです。

こころと体が、つながっていることを絶対に忘れないで。

主治医に、自分の考えを伝えられるようになる


Yさんは月に1回、定期受診を続けていました。伴走の中で変わったことのひとつは、自分の治療について、主治医に考えや希望を率直に伝えられるようになったことです。

受診日が近づくと、主治医にどう伝えるか、どう相談するかを一緒に考えました。

睡眠導入剤に頼り続けることに、Yさんは強い抵抗感を持っていました。私はこれまで伴走してきた方々の中で、主治医と相談しながら薬を減らしていった事例を話し、減薬の過程で気をつけたいことも伝えました。

「そんなこと、誰も教えてくれませんでしたよ」

Yさんは驚きながらも、うれしそうでした。

自分の場合は、一生飲み続けると決まっているわけではない。そう知ったことが、希望になったといいます。

そうしてYさんは、主治医と相談を重ねながら少しずつ量を調整し、4分の1錠を経て、最終的に睡眠導入剤をゼロにすることができました。

揺らぐ日も、一人で抱えない


抗うつ薬だけではなく、眠剤もやめたあと、Yさんにはふと自分を疑う日もあったそうです。

「え、薬を飲まずに生きている自分って、本当に大丈夫なのか?」

そんなときこそ、一人で抱えずに私へLINEをしてくださいとお伝えしていました。揺らぎは、回復の途中で誰にでも起こります。大切なのは、揺らいだときにすぐ戻ってこられる場所があることです。

気持ちの揺れに寄り添い、長引かないよう一緒に整えていきました。

人間関係にも、優先順位をつける


友人関係について、Yさんは「無理に周りに合わせようとしていた自分」に気づいたといいます。

人間関係にも優先順位をつけ、本当に大切なつながりには、思い切って自分から飛び込んでみる。そう決めました。

職場に友人を求める必要も、なかったのです。職場の人は、あくまで仕事の仲間。その中から友達を選ばなければいけない、という決まりはどこにもありません。

「うつ=自分」から、離れて


5年間、「うつ=自分」として生きてきたYさん。冬が来るたびに悪化し、そのたびに「やはり治らない」と確信を上書きしてきました。

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けれど、悪化のきっかけは冬そのものではありませんでした。見て見ぬふりをしてきた生活習慣と、一人で抱え込む暮らし方にありました。それに気づき、休日の小さな一歩から生活を変えていったとき、冬は「悪化する季節」ではなくなりました。

Yさんは、すべて記録として日記を書いておられました。うつ再発したくない方には「記録」は必須ですからね。

最後に、私から支援記録をお渡しして、Yさんとの5カ月は終了していったのです。

きずけば、春になってました^_^

冬の波は、来ると分かっていれば備えられます。

そして備えは、一人でするより、伴走者がいるほうがずっと確かですから。

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おわりに

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

Yさん、その後いかがですか。昨年末は年賀状をありがとうございました。
冬の波が来ても、あなたはもう戻り方を知っています。迷ったときは、伴走中に書き続けたあの日記帳を開いてください。そこに、あなたの汗と涙の記録がありますから。

そして今、かつてのYさんと同じように、不安な冬を迎えようとしているあなたへ。


▶あなたへのmessage

相談するかどうか、迷っていていい。

迷っているということは、どこかで「このままではいけない」と感じている証拠でもある。

決めるのは、話してみてからでいい。

この冬を、一人で越えなくていい。

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▶▶重要なお知らせ▶▶

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