苦しみと向き合い続けたプロセスそのものが、成長そのもの。
回復のゴールは、元の自分に戻ることじゃない
うつ病から回復するというと、多くの方は「元の自分に戻ること」をイメージすると思います。
でも、その考え方自体を、少し疑ってみてほしいと思っています。
どん底を経験したのなら、そこから戻る先は「元の自分」ではなく、「以前より深く生きられる自分」であってもいいはず。この視点を支えてくれる「PTG」という考え方についてお話しします^_^
PTGとは何か
PTGとは「心的外傷後成長」のことです。強い苦難やつらい経験と向き合った結果として、人に生まれる心理的な成長を指す言葉ですね。
似た言葉に「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」がありますが、こちらは苦難が心に傷として残り、生活に支障をきたす状態を指します。PTSDばかりが語られがちですが、その先には、苦難を経て以前よりも深く生きられるようになる道すじも、確かに存在するのです。
大切なのは、「苦しかったけど、それでも成長できた」ということではありません。
苦しみと向き合い続けたプロセスそのものが、成長そのものだったということ。
つまり、うつ病だった期間は「失われた時間」ではなく、「これから深く生きるための材料」になり得ます。

回復した方に、実際に起きていく変化
これまで多くの方と向き合ってきた中で、回復が進んだ方には、次のような変化がよく見られました。
眠れること、食べられること、朝起きて動けること。以前は意識すらしなかったことに、深く感謝できるようになります。
表面的なつきあいが自然と減り、本当に必要な人だけが手元に残ります。無理をして広げていた人間関係の重さに、初めて気づく方も多いです。
「仕事のための人生」から「生きるための仕事」へと、優先順位が入れ替わります。休職や転職という選択肢が、後ろ向きではなく前向きな選択として見えてくるのはこの段階です。
どん底を経験し、そこから戻ってきたという事実そのものが、以後を生きる自信の土台になります。
「明日死んだら後悔しないか」というような、これまで考えてこなかった問いを、自然と持つようになります。
・・・・など。。。
一人で抱え込むだけでは、成長にはつながらない
ここで一つ、お伝えしておきたいことがあります。
PTGは、苦しい経験をすれば誰にでも自動的に起こるものではありません。
一人で苦しみをただ繰り返し思い出しているだけでは、それは成長にはつながらず、つらい記憶を反芻するだけになってしまう。
成長につながる振り返りには、「なぜこうなったのか」「ここから何を持ち帰れるか」と意味づけながら考えるプロセスと、それを安心して言葉にできる、信頼できる相手の存在が必要です。
うつの渦中にいると、「この感覚は経験した人にしかわからない‥‥」と、自ら孤独を深めてしまうことがあります。
だからこそ、常時ではなく必要な時にそっとつながれる伴走者の存在が、つらい記憶をただの反芻で終わらせず、成長につながる振り返りへと変えていく鍵になるのだと、私は考えています。
おわりに
うつ病からの回復のゴールは、元の自分に戻ることではありません。
どん底を経験したからこそ、以前より深く、自分らしく生きられるようになること。
それがPTGという道すじであり、私が目指している「回復」の、その先にあるものです。
※この記事は筆者の考え方を整理したものであり、治療の代替にはなりません。
